2024年の今年は安部公房生誕100年。
今回も、まさに安部文学と言えるような作品を鑑賞。
今回の小説は、
『人間そっくり』
というSF小説。
〈こんにちは火星人〉というラジオ番組の脚本家のところに、火星人と自称する男がやってくる。
その男とやり取りをしていく間に、脚本家自身も、自分が人間そっくりの火星人なのか、火星人そっくりの人間なのか、わからなくなってくる。
わからなくなってくる脚本家自身と同じように、小説を読んでいる読者の自分においても、ぐるぐる頭が回ってわけがわからなくなってしまうような作品。
個人的には、まさに安部文学、と言えるような作品で、非常に好きな作品です。
ただ、これって、SF作品と言ってしまえばそうなのだけれども、頭がぐるぐるしていく、この自分自身そのものの世界観も、果たして実話の世界なのか、寓話の世界なのか、分らない感じがする。
―いったい、この現実は、寓話が実話に負けたせいなのか。それとも、実話が寓話に負けたせいなのか。法廷の外にいるあなたに、お尋ねしたいのです。いまあなたが立っている、その場所は、果たして実話の世界なのでしょうか、それとも、寓話の世界なのでしょうか……。
小説の後半でもこのように書かれているが、今の現実に対しても、懐疑的な視点を向けるような、奇妙な作品です。
現実に対する、特異な視点が非常に面白いです。
