また名作に出逢いました。
2024年に、没後40年を迎える作家、有吉佐和子氏。
その有吉氏の幻の長編小説が、奇跡の復刊を遂げたということで書店でフェアをやっており、気になって手にしたのが、今回紹介する、
『青い壺』
という小説でした。
ひとりの陶芸家が焼き上げた、ひとつの青い壺。
ふとしたキッカケでその壺は作り主の元を離れ、人から人へ様々な場所へ移動していく。
壺自体も、いろいろな扱いを受ける。
ある時は恭しく高級な桐箱に入れられて大切に保存されたかと思えば、ある時は新聞紙に包まれ床下に無造作に置かれるときもある。
その中で、美しい壺に反映されるかの如く、様々な人間の機微や心理が克明に描き出される。ここがこの文学作品の醍醐味である。
青い壺の『美』というものを通じ、人間各々の持つ美意識や、真贋の問題にまで風刺する。
作者有吉佐和子氏の巧みさは、現代のそれにも十分痛烈に通じるものでないかと感じた。
そして最期、数奇な運命を経て、壺はまた作り主の元へ戻ってくる。
その時作り主が思い至る心理が、非常に清々しい。
読者は、最後まで読んでよかったなと思えるのではないだろうか。
遅咲きではあるが、有吉佐和子氏の作品をもっと読んでみたいと思った。
現在読んでいる作品は、『非色』というものなので、また読んだら感想を書きたいと思います。