とりま文系歯科医師が自己投資。

読書好きな開成、一橋大卒文系出身歯科医師のマイペースブログ。読書を中心に学んだ知識をアウトプットすることで、何か社会が少しでも変わればなと思い開設。好きなテーマは小説全般、世界史、経済学、心理学、経済投資など。筋トレも趣味です。

読書感想:『非色』

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 こんなにも衝撃的で、感動した作品だとは思いませんでした。

 間違いなく、自分の中での印象に残った傑作です。

 

 今回ご紹介するのは、前回に引き続き、有吉佐和子氏の

非色

という小説。

 

 

 物語は、終戦後、日本に駐留した占領軍と結婚した、いわゆる『戦争花嫁』を主人公とする。

 恋に落ちた黒人占領軍兵士との間に、妊娠が発覚した主人公は、その子供を産むか産まないか悩む。

 しかし、実の母親が、黒人と結婚しようとしている主人公に対し、

『黒ン坊生まれちゃ困るじゃないか』

と言い放つ。

 反骨精神のようなものを持ち合わせる主人公は、より黒人兵士との結婚へと加速させていく。

 

 

 ただ、そんな主人公も、世間に対する体裁を決して無視できなかった。

 国際結婚したとはいえ、夫が黒人だとは言えない。

 黒人に対する日本社会の冷たい偏見から逃れようとする主人公は、自分の子どもを守るため、夫の国であるアメリカへ行こうと決意する。

 

 しかしながら、渡米した先にあったのは、むしろ日本よりも過酷な現実であった。

 日本にいてはわからない、移民の国であるアメリカ社会の、複雑に絡み合った人種差別に、主人公は直面する。

 

 この作品の名作だと思うところ。

 筆者が一番伝えたかったのは、戦争花嫁の過酷な人生そのものではなく、どんな人間も逃れられることのできない、人間社会に根強くある『差別の構造』を抉り出しているところにあると思う。

 そしてそれは、人種問題や、ナショナリズムにかかわるものではなく、人間本来の持つ『差別の構造』であると思う。

 

 主人公自体も、決して差別意識をまったく持ち合わせない、聖人君子ではない、というところが、非常に生々しい。

 

 

―金持は貧乏人を軽んじ、頭のいいものは悪い人間を馬鹿にし、逼塞して暮らす人は昔の系図を展げて世間の成上りを罵倒する。

要領の悪い男は才子を薄っぺらだと言い、美人は不器量ものを憐み、インテリは学歴のないものを軽蔑する。

人間は誰でも自分よりなんらかの形で以下のものを設定し、それによって自分をより優れていると思いたいのではないか。

 

 差別の意識というものは、どんな人間にも通底しているという本質を、小説という形で表現できる有吉佐和子氏の芸術性に、非常に惹かれました。

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