以前『三島由紀夫レター教室』
という、三島由紀夫作品をご紹介しましたが、今回も三島作品の一つをご紹介したいと思います。
2020年が三島由紀夫の『生誕95年・没後50年』だったみたいで、昨年の2020年の時に購入し、今まで積読しておいた本をやっと読み終えました。
ストーリーは、生きることに対して価値を見出さなくなった退廃的な青年が、
「どうせ自殺するなら」と、『自分の命を売る』広告を新聞に出すところから始まる作品。
実際に青年のもとには、命を買おうとする様々な客が訪れる。しかし、青年はそんな人々と関わりながら、何故か死ぬことが出来ずに生き延びてしまう。
そうした時間を過ごす中、皮肉にも主人公は、生に対しての価値観が次第に変化していく。
しかしながら、そうなると逆に命の危険に晒されるようになり、主人公は今まで容易く捨てようとしていた命に対して、非常に強い執着を覚えるようになります。
三島由紀夫の端麗な日本語が、生に翻弄される主人公の辛さを強烈にかつ鮮明に描写していることで、現代の我々が今読んでも非常に明快なイメージを喚起します。
三島作品で有名な作品はいくつもありますが、こうした退廃的ニヒリズムを表現しながら、ユーモアのあるような作品は、とても興味深いなと思って読むことが出来ました。
自分ももう少し歳が若かった時に読んでいたら、この主人公の気持ちが強烈に理解できた気がする。(今でも何となく分かるけど)
もっと年若い時(出来れば10代のうち)に、三島作品をもっと読んでおけばよかったなと思う作品の一つでした。