以前に書いたブログ記事で、『時代を先取りしすぎた男』として、『三島由紀夫』のことを紹介しましたが、今回もそんな三島作品の一つを読了したので感想を残していきたいと思います。
今回紹介するのは、
『三島由紀夫レター教室』
と言う、少し三島文学の中でも特徴的な作品。
当時スマホもパソコンもなく、遠くにいる人間の心情の意思疎通を図るために、手紙が主として使われた時代、人々はどのように感情の機微を描いたのであろうか。(ちなみに作品自体は1974年に刊行)
本作は、架空の5人の個性的な登場人物が、代わる代わる手紙を通じてやり取りを行い、それが最終的に一つのストーリーとして繋がるというお話。
ただ、その書き言葉の中に、日常生活における、悲しみや笑い、また上品ぶるわりには、お互い憎しみあったりと、千変万化の人間の感情をリアルに描き出しているところが、三島由紀夫の才能なのではと感じるころ。
手紙一つ一つが、完結した世界なのであるが、それを縦横無尽に使って人間のリアルさを描いているのが素晴らしいと感じました。
巻末の解説でも、作家の群ようこ氏が、登場人物の一人、氷ママ子の文章表現を引用しているが、とても印象深い。
氷ママ子は、自宅で英語塾を経営している、45歳の未亡人。昔自分が美人であったことを忘れられる、上流を気取っている女性なのですが、この人の発現は非常に共感するところが多かったです。(三島氏の登場人物紹介に書かれている文章を、編集改変したもの)
-ともすると、恋愛というものは『若さ』と『バカさ』をあわせもった年齢の特技で、『若さ』も『バカさ』も失った時に、恋愛の視覚を失うのかもしれませんわ。
三島作品の中では比較的読みやすいのではないでしょうか。今後も色々読んでみたいと思います。