自分の学習範囲として、それぞれ経済学と歴史の分野を学んでいますが、今回紹介する本は、経済が歴史にどのように関係しているかを理論的に解き明かす非常に面白い教材となっています。
著者は韓国の経済学者で、Youtubeチャンネルも解説しているホン・チュヌク氏。
本書の内容は、世界の歴史を変えた重大事件の背景を見つめることで、世界がどのように回ってきたのか、歴史に名を残した英雄たちの行動だけでは説明できない裏側を理解するものになっています。
8部構成になっている本書は、産業革命前後の西洋世界の発展から、1929年の大恐慌、そして最終的には『コロナ・ショック』後の世界経済についても説明がされている。
経済と連関した歴史の一面を読み解くことで、今後の世界経済の分析にも役立つ、本書は非常に有益なことを学ばせてくれると思います。
学ぶべきことは色々あったのですが、今回は個人的に非常に勉強になった、ナポレオン戦争における経済的背景をご紹介したいと思います。
〈(1)軍事力で圧倒的に不利だった英国が戦争に勝てた理由〉
19世紀初め、ヨーロッパ大陸を制覇したナポレオンにとって、最大の脅威は英国であった。
英国はフランスを牽制するために、7回にわたって対仏大同盟を結成し、またスペインとポルトガルの反乱を持続的に支援したりなどした。
その戦争で中心になったのは英国海軍なのだが、その英国は、どのようにその軍隊を育成したのでしょうか?
一番の理由は、1688年の名誉革命だと考えられる。名誉革命を境に英国の国債金利が急落したため、フランスなどライバル国家との競争で優位に立てた。
名誉革命で英国議会はオランダのオラニエ公ウィレムをウィリアム3世として新国王の座につけ、新たな税金を貸す際には議会の同意を得ること、国民の財産を一方的に強奪しないことを約束させた。
また、オランダ式の金融制度が英国に持ち込まれたことで、英国は他国と比べ、はるかに低い金利で資金を調達できるようになった。これが英国陸海軍の戦力増強へと繋がった。
加えて、金利下落の恩恵を受けたのは英国政府だけではなかった。『信頼に足る』資本市場が形成されることで、全世界の富豪が投資のため、我先にとロンドンに押し寄せるきっかけにも繋がったといいます。
歴史の教科書の中では、どの国が勝利をしたか、という事実に関しては描写がありますが、こうした背景を学ぶことは決して多くは無かったので、歴史学習における思考のフットワークを広げることの大切さを感じました。
次回はナチス政権下のドイツが、なぜ『たった3年』で経済の回復ができたのか、ご紹介したいと思います。