日経新聞やビジネス雑誌で最近盛んに取り上げられる、『ESG投資』についての本を読む。
ESG投資に関して、何となくの意味合いは理解しているものの、その概念の変遷が気になって本書を購入しました。
ESG思考 激変資本主義1990-2020、経営者も投資家もここまで変わった (講談社+α新書)
そもそも『ESG投資』とは何なのだろうか。
言葉について簡単に説明すると、
ESG投資:環境や社会を考慮することで投資パフォーマンスを向上させる投資戦略のこと。
ESGの頭文字はそれぞれ、E(環境:Environment)、S(社会:Social)、G(ガバナンス:Governance)であり、2018年の時点で、33.4%と世界全体の資産の3分の1がESG投資で運用されるまでになっている。
本書ではそんなESG投資に関して、どのように発展していたのかを学ぶことができる。
【経済思想の4分類】
経済に対する認識や思想に関して、筆者は大きく4つに分けて分類している。まずはこの4つの考え方を紹介する。
①オールド資本主義
・全ての経済認識の出発点ともいえる考え方。
・企業が環境・社会の配慮をすると利益が減るので、その影響を考慮すべきではないと考える、いわゆるオーソドックスな考え方。
②脱資本主義
・利益が減ったとしても、環境・社会への影響を考慮した経済活動が必要とする考え方。
・オールド資本主義を批判するときに出てくる認識。
③ニュー資本主義
・環境・社会への影響を考慮することで、投資パフォーマンスを向上させる投資戦略をとり、利益が増えると考える主義のこと。本書はこの考え方を説明している。
④陰謀論
・『環境・社会への影響を考慮する』きれいごとの裏には、何か壮大な陰謀があると、斜に構えてものごとを考えている考えのこと。
上記4つの考え方があるが、経営や金融の主流にいた勢力が、オールド資本主義からニュー資本主義へと立場を転身させたことを本書は詳細に説明している。
【リーマンショック後の、ニュー資本主義の確立】
リーマンショックがいきなり世界中の金融機関を襲い、会社が持続可能でなくなったように、自分達が気づいていない、見えていないリスクがどこかに潜んでいるのではないかと、多くの経営者が思うようになった。
そして、環境や地域社会と共存した上で企業を存続させ、利益を拡大していくという、『サステナビリティ戦略』と『ESG投資』の両輪により、ニュー資本主義が大きく羽ばたいていくことになる。
リーマンショック後の2011年、ハーバード大学のマイケルポーター教授が、『ハーバード・ビジネス・オンライン』誌に論文を出す。
これからの企業には、社会貢献活動としてのCSRではなく、企業の長期的成長のための新たなアクションが必要で、ポーター教授はこれを『共有価値の創造(CSV)』と名付け、この論文のタイトルになった。
気候変動や労働者の人権、水資源の問題など、環境・社会問題に対応しなければ、長期的な利益追求に対しての悪影響が及び、茹でガエルのような状況になってしまう。
こうした経営者たちのリスク認識の変化が、ニュー資本主義の考えの萌芽になっていった。
また新型コロナウイルスによるパンデミックが到来した今、ESG思考が真価を問われていると筆者は述べている。不況期にこそ真価が問われるのだ。
長期思考をし、将来の事業成長や価値創造にとって重要な項目を見定め、そのリスクと機会にしっかりと経営者は布石を打つ。
こうした時代にこそ、ESG思考をより深化させることが大切だと感じた。