6月末になったら、上半期の読書ランキングなるものを作ろうと思っているのですが、今回紹介する本は、間違いなく上位ランクに食い込むと思っている本です。
イギリス在住のコラムニスト、ブレイディみかこ氏も、
『近年、最も圧倒された本』
と、帯コメントで絶賛されていましたが、本当にそれくらい読んでタメになったと思える本でした。
プロローグでも書かれていますが、この本のテーマを一言で説明すると、
『経済学の解説書とは正反対の経済の本』
という形容がバッチリ当たる。
筆者はギリシャの経済危機時、財務大臣を務めた、ヤニス=バルファキス氏。
元々経済学部教授であった筆者は、若者に経済学を教えているうちに、
『経済モデルが科学的になればなるほど、目の前にあるリアルな経済から離れていく。』
ということを実感した。
物理学や工学などの自然科学では、理論が洗練されればされるほど、実態の理解がより深まる一方で、経済学ではそうとはならない。むしろ経済は混迷を極めてしまう。ギリシャ危機を経験した当事者だからこそ、その気持ちは強いものがあるのかもしれない。
筆者が本書を書いた目的は主に2つある。
1つは、経済を学者まかせにするのではなく、誰もが経済についてしっかりと意見を言えるようになってほしいということである。
それが良い社会の必須条件であり、真の民主主義の条件だと述べる。
もう1つの目的は、『資本主義=市場社会』の正体を解き明かすことにある。
経済をまだ学んだことの無い人にも読んでほしいため、難解な専門用語は極力使われていない。平易な言葉を用いつつも、現在にもつながる経済の事柄の歴史的意味が説明されている。
・なぜ、格差が生じたのか?
・借金や利子の概念はどうして生まれたのか?
・そもそも、なぜイギリスで市場社会経済(資本主義経済)が生まれたのか。
現在に通用する経済概念の歴史的な流れを理解することで、読者は気づくことだろう。
『自分たちの豊かさが、遠く離れた誰かもわからない多くの人の上に成り立っているのだ』
ということを。
それでは我々は、こうした経済の諸問題についてどう立ち向かえば良いのか。
唯一の解決策は、金融政策の決定過程を民主化することだと、筆者は説く。つまり積極的に、民主主義における政治に参加するということである。
市場社会は人間の欲望を永遠に生み出し続ける。経済を学者に任せず、自分で理解し、精神を解放し続けることで、
『自分の身の回りで、そしてはるか遠い世界で、誰が誰に何をしているか?』
という経済学の問いに対する回答を導き出すことが大事なのだと説く。
本書を読み、改めて経済学を学ぶ必要性を痛感しました。
経済に関心を持つことは、民主政治に参加することであり、精神の自由の源泉になる。
人間が真に自由で幸福な社会を実現するために、一人一人の努力が必要になる。
自分も微力ながら社会に貢献していきたいと思いました。