現代の日本政治を考える上で、この問題はもう目を背けるわけにはいかないだろう。
昨年から買っていたのですが、今回やっと
『統一教会 何が問題なのか』
を読み終えました。
宗教はそれを信じる者のアイデンティティの根幹を規定し、世界観総体を形成する。
つまり、宗教には妥協や譲歩といったものは原理的には有り得ない。
この宗教的特徴を鑑みた上で、『政教分離原則』というものが存在する。
政教分離原則は、政治権力の作用が全ての宗教に対し平等であるように、特定の宗教宗派の立場に偏らないようにするために設けられたもの。
しかしながら、その線引きは難しい。
宗教票に限らず、組織票は、投票率がどれだけ下がっても必ず投票してくれるあり難い存在。
政党にとって、勢いは徐々に落ちてきたとは言え、そうした宗教票の力は依然として大きい。
政教分離原則を唱えながら、世俗的権力の政治側と、宗教的権力の宗教側の利害がどうしても一致してしまうからこそ、この問題は非常に根深いのだと思う。
新書の中で、宮崎哲弥・島田裕巳・仲正昌樹・小川寛大各氏の対談が掲載されている。
そのなかで宮崎氏は、保守側に対しての劣化を分析している。
本来保守は、個人主義的で厳格な政教分離を唱えるリベラルに抗して、市民宗教や公共宗教の成立に尽力すべきだったのに、統一教会など右派的な装いの新興勢力に依存することで、国民の共同性の醸成という基礎固めを怠ってきた。
こうした保守側の基礎固めが、他力本願であったために、切っても切れない関係、本来なら相容れないはずなのに、持ちつ持たれつの関係を創り上げてしまったのではないだろうか。
こうした宗教的な組織票に対抗できるのは、一人一人の国民が持つ、参政権であろうと思う。
多くの人がより政治に参加し、組織票の相対的優位性を覆すことが、日本の政治のために非常に重要だと感じました。