どうして今の若い人たちは、こんな政治の現状に抵抗しないのだろうか。
現状政治の全てを否定するわけではないが、ここまで自分達に不利になるような状況の中で、なぜもっと若い世代の人々は、政治に怒りを持たないのだろうとは、私も強く感じています。
その理由は、彼らが、
『空虚感を抱えたイエスマン』
だからと、内田樹氏は本書で述べています。
この『空虚感』というのがミソなのだろう。『虚しい…』と言いながら、現状を追認し、長いものに巻かれ、大樹の陰に寄るのは、むしろクールでスマートな生き方なのだ。そうした反応を、現代の若者は持っているのだと内田氏は分析する。
社会のシステムは劣化し続けているが、このシステムの中以外に生きる場所が無い以上、その『劣化したシステムに最適化してみせる』他に、どうしようがあるというのか。
そう暗い眼をしてうそぶく『虚無的な』青年は、上にヘラヘラもみ手するイエスマンよりも、だいぶ見栄えが良い。
口角泡を飛ばしてシステムに正面から抗っている愚直な『左翼』や『リベラル』や『人権派』より、そんな『虚無的な』方が数段賢そうに見える。
だったら、そっちの方がいいと、『虚無感を抱えたイエスマン』になる。
本書は、内田氏が様々な媒体に書いたエッセイの、コンビレーション本。時事的に少し古いものもありますが、ピンとくるエッセイは必ずあると思います。
そうしたピンとくるエッセイに出逢うのも、非常に面白いものだと思います。