お疲れ様です、スナフキンです。
今年もあと少し、読書して感想書きたい本がいくつか残っているのですが、出来るだけ年内のうちに書き残していければと思っています。
今回ご紹介するのは、湊かなえ氏著
『母性』
という物語。
著者の湊かなえ氏曰く、『これが書けたら、作家を辞めてもいい。』とまで言わせしめたヒューマンミステリー。
あともう少しで放映終了だとは思いますが、現在全国で映画化されており、映画鑑賞の前に、小説で是非とも読んでみたいと思っていた作品でありました。
物語は、ある17歳の少女の、自殺か事故かわからない転落記事から始まります。
『母の手記』と『娘の回想』、そして冒頭の『母性に関して』の新聞記事を含めた、とある教師たちの会話によって展開する。
言葉を詰まらせながら、『愛能う限り、大切に娘を育ててきた。』と発する母親。
このセリフに、強烈な違和感を覚えながら、読者は物語を読み進めていくことになるでしょう。
母親から愛される立場であり続けたい、その気持ちを抱き続けたまま子供を産んだ母親と、その母親から愛されたい娘。同じ時、同じ出来事を回想しているはずなのに、2人の話はとても食い違っていく。
ずっと真実及び、各々の本当の感情を上手く理解しきれず、物語は衝撃のクライマックスを迎えてしまう。
小説の巻末の解説で、代官山蔦屋書店の文学コンシェルジュ間室道子氏も、『とってもいい人』及び『苦しんでいる子供』が語る内容には、要注意しないと騙されてしまうと説いている。
前者は、自分自身の行動や振る舞いには、自分は何一つ間違っていないという、潔癖なくらいの頑なさを持っている。そして、その頑なさに対し、些細なことでも否定されるようなことがあれば、武装のような威嚇や脅威で他者に迫ってくる。
また、後者も要注意である。精神的に、肉体的に苦しんでいる子供は、思い出を美化したり、逆にたわいもないことを針小棒大にして覚えていたりするので、娘が語った内容にも、客観的な視点をずらさず読んでいかなければならない。
こうして、いったい何を信用すればいいのか、ギリギリまで分からず、読者に頭を悩ませながら展開するストーリー展開がこの小説の醍醐味であろう。
読了後の感想を述べてしまうのは、敢えて避けますが、非常に読み応えのある作品なのではないでしょうか。
湊かなえ氏の他の作品も読んでみたいと思います。