お疲れ様です、スナフキンです。
先日池袋のジュンク堂書店に足を運んだのですが、光文社古典文庫の棚で、過去5年間の売れ行きランキングというものが公開されていました。
その中で、1位だったのが、今回紹介する、日本を代表する古典的随筆
『方丈記』
でした。
この世の無常と、草庵での簡素な暮らしを描いた本作。
冒頭の『ゆく河の流れは絶えずして~』は、多くの人が知るものだと思いますが、中高生に読んで以来、改めて読み返すと、なかなか染み入るものがあります。
訳者の蜂飼耳氏もまえがきで述べているのですが、『方丈記』が受け継がれ、現代まで伝わっているのは、達観を目指しながらも実際にはその手前で行ったり来たり、うろうろする人の葛藤や悔しさ、寂しさが滲んでいる、そう思わせるような哀愁が漂うからなのではないでしょうか。
出家して、仏道修行に懸命に励むはずの著者が、ちらちらと俗世間を気にし続ける。
無常観を前面に押し出し、その部分を強調したいにも関わらず、読めば読むほど、著者鴨長明の迷いや葛藤が見え隠れする。
だがここに、現代人が身近に感じる理由があるのではないでしょうか。
―すべては移り変わる。
(中略)
生きることをめぐる儚さや虚しさを、受け止める手段の一つとして言葉が用いられていることに気づいてしまうと、『方丈記』は、孤高の古典文学というより、現代に生きる者にとっても想像することの難しくない、一人の男の哀しみそのものとして迫ってくる。
文章量もコンパクトで読みやすい『方丈記』。
ふと俗世間の喧騒に疲れたとき、それを俯瞰するようなヒントを与えてくれる古典の存在は、常に現代において価値のあるものとして輝くのではないでしょうか。