こんにちは、スナフキンです。
読書感想を書くペースがだんだんゆっくりになってきましたが、ストレスにならない範囲で、自分の記憶に残していきたい作品を引き続き書き残していきたいと思います。
『キャプテンサンダーボルト』
と言う作品。
あらすじを簡単にご説明すると、こんな感じ。
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主要人物の相葉時之と井ノ原悠。
二人はかつての少年野球チームメイトであり、性格や価値観は異なるものの、いいコンビとして交流があったのだが、高校時代の過去の出来事をキッカケに、決定的に関係が壊れてしまう。
以降、二人は全く交わることがなく年月が過ぎる。
相葉は後輩を救うためにヤクザがらみの案件に首を突っ込み、巨額の借金を背負う。
また井ノ原は、身体が弱い息子の通院費用を捻出するために、とある副業をしていた。
そんな中、借金返済のために一攫千金を狙った相葉は、手違いからテロリストに命を狙われる。絶体絶命の中、井ノ原はと再会したことで、物語が動き出す。
過去に発生した感染症の『村上病』や、戦時中墜落したB29、そして公開中止になった特撮映画など、様々なファクターが絡み合い、最後まで急展開の手に汗握る小説となっている。
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小説を共著で制作するというのは非常に少ないような気がしますが、その影響もあるのでしょうか、ストーリーが非常に急展開を起こし、最期までどんな結果になるのか気になる作品になっていました。
本作品は、阿部氏と、伊坂氏のお互いのリスペクトによってできた作品なのでしょう。
文庫本の巻末に、両氏の特別対談があるのですが、伊坂氏は阿部氏に対して、
『純文学のエースであり、憧れの存在』
と評し、一方の阿部氏は伊坂氏のことを、
『ロケットのように飛んでいって(人気になって)、あっと言う間にキラキラした存在になった』
と語っており、2010年6月にお会いした、との経緯が記されています。
そんな両氏ですが、共通した部分はいくらでもありつつも、読者にとっても非常に興奮したのが、
『村上春樹に立ち向かう』
という目標を持っていたこと。
特別対談で両氏はこのように述べています。
-阿部:村上春樹は僕らの世代の作家にとって、上空を遮っているUFOのような存在で、これを超えていかなくちゃいけない、という話ですね。
伊坂:そう。大雑把に言うと、世界で注目される日本人作家というのは春樹さんくらいじゃないですか。でも、春樹さんは僕らより二回り近く年上で、感じ方や捉え方は違うし、僕らがそこに立ち向かわないといけない気がして。
小説の内容を楽しむことを主とする読者にとっては、各々の作家が目指す目標や方向性というものを、知る機会自体はあまり多くないと思うのですが、こうして現在人気の作家のモチベーションを知れるというのは何だかワクワクしたものが有ります。
また、この作品の打ち合わせ時には、東日本大震災という忘れられない出来事がありました。
加えて、昨今ではコロナウイルスの流行により、本作の持っているメッセージみたいなものが決して色褪せることなく、今に通じている、そのように語ってもいます。
両氏ともに、ある種の危機意識についての小説を書き続けており、
『世界をどうみるか、どの角度から見るか、そこに何を感じて、その中でどう生きていくか』ということを、本作は提示してくれる、そのように阿部氏は語っていますし、伊坂氏も、『間違いなくこの十年の代表作の一つ』と語っている。
人気作家の挑戦作であると思って読むと、また新しい見方が出来るのではと思います。