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読書好きな開成、一橋大卒文系出身歯科医師のマイペースブログ。読書を中心に学んだ知識をアウトプットすることで、何か社会が少しでも変わればなと思い開設。好きなテーマは小説全般、世界史、経済学、心理学、経済投資など。筋トレも趣味です。

読書感想:『行動経済学の使い方』

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自分が一橋大学経済学部に在学していた10年ほど前にも、行動経済学関連の本は結構流行っていて、自分も興味を持ちながら何冊か読んでいた。

とはいえ、系統だって行動経済学の説明をしている本っていうのを読んだことがありませんでした。(自分が読んだことが無いだけで実際は昔からそうした本はあったかもしれない)そんなわけで今回初めて、改めて勉強しようと思って書店でこの本を買いました。

 

行動経済学の使い方 (岩波新書)

行動経済学の使い方 (岩波新書)

 

 

 

そもそも従来の経済学と、行動経済学の定義に関して改めてまとめてみる。

 

伝統的経済学:利己的で高い計算能力を持って、全ての情報を用いた合理的意思決定を行う人間を前提にしている経済学

行動経済学:1980年代から発展した経済学。人間の意思決定において、伝統的な経済学で考えられる合理性から系統的にずれるバイアスを前提にしている。

 

行動経済学は、従来の経済学で考えられていた人間像をいくつかの点で現実的なものに変えている。筆者は大きく4つのポイントを紹介しているので、それを紹介する。

 

(1)プロスペクト理論

従来では、人間は将来起こりえる事象の発生確率と満足度を加重平均したものの値で合理的意思決定をすると考えられていたが、行動経済学ではプロスペクト理論で意思決定すると考えられている。その結果、利得と損失を非対称に感じたり、ある事象が発生する確率を使わなかったりする。

 

プロスペクト理論の内容としては以下のようなもの。

確実性効果:80%や90%など比較的高い確率を低く見積もる一方、10%や20%など比較的低い確率を高いと見積もる。また、確実なものと不確実なものでは、確実なものを選ぶ傾向が強い。

 

損失回避:利得局面ではリスク回避的だが、損失局面ではリスク愛好的になる。

 

フレーミング効果:同じ意味でも、表現が違うだけで人間の捉え方は変わる。

 

保有効果:現状を変更する方がより望ましい場合でも、現状の維持を好む傾向のことを現状維持バイアスと言い、現状の参照点の価値を高く見積もることで、そこから変更することによる損失回避を避けようとしている。

 

(2)現在バイアス

計画は出来るのに、いざそれをやろうと思うと現在の楽しみを優先し、計画を先延ばししてしまう傾向がある。こうした先延ばしを防止するために、予めコミットメントと言う、自分の行動を制約するような手段を取ると良い。

 

(3)互恵性利他性

 行動経済学では、自分自身の物的・金銭的選好に加えて、他者への物的・金銭的利得に対しても関心を示す社会的選好が想定されている。個人的にはこの社会的選好の理論はとりわけ興味深いので、今後関連書籍も読んでみたいと思います。

ちなみに社会的選好には、①利他性、②互恵性、③不平等回避などがある。

 

・利他性には、

純粋な利他性:他人の幸福度が高まることが、自分の幸福度を高める。

ウォーム・グロー:自分が他人のためになる行動や寄付額そのものから幸福感を感じる。

 

互恵性

他人が自分に対して親切な行動をしてくれた場合に、それを返すという選好。

 

不平等回避

所得の分配が不平等であることを嫌う人間の心理のこと。この社会的選好に関しては、個人的に特に興味深い。よくある雑誌の年収ランキングなどを読みたくなる心理もこうしたものなのだろうなあと思う。

 

(4)ヒューリスティック

我々の意思決定には意外にも思考費用がかかることから、計算能力に限界があったことを前提に、合理的意思決定とは違う、直感的な意思決定をすることがある。この直感的意思決定のことを、ヒューリスティックスと呼んでいる。

 

ヒューリスティックスの例としては以下のようなものがある。

 

意思力

精神的あるいは肉体的に披露している時には、自分達の意思決定能力そのものが低下する。金銭的に貧困にある人間が、その日の生活をどうするかということでエネルギーを使い果たし、なかなか貧困から抜け出せないのもこうした理由による。

 

選択過剰負荷情報過剰負荷

意思決定における選択肢や情報が多い場合、どれを選ぶかが困難になり、結局、意思決定をしなくなるということがある。これを、選択過剰負荷、情報過剰負荷と言う。

あまりに情報が多いため、良い意思決定が出来なくなる場合には、重要な情報をわかりやすく提示することを心がける必要がある。

 

アンカリング効果

全く無意味な数字であっても、その最初の数字を参照点として認識し、後の行動選択に影響を与えてしまうこと。

 

 

以上4つのポイントが行動経済学を学ぶ上で重要なものである。

もちろんこれ以外のファクターも多いし、本書には具体例を用いてハッとさせられる事実などもあった。

例えば、国民の保険料負担における誤解や、生活保護や失業保険などの社会保障が制度としてあるにも関わらず、なかなか浸透しない理由など、行動経済学の観点から学ぶと違った視野が広がってくる。

後日またそうしたことも書ければなと思っています。

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