早速ですが問題です。
Q:ジャックはアンを見ており、アンはジョージを見ている。ジャックは既婚だが、ジョージは違う。1人の既婚者が1人の未婚者を見ているのか。
『イエス』、『ノー』、『判断できない』のいずれかを選べ。
早速答えを言ってしまうが、答えは『イエス』。
え、この状況だけでは『判断できない』のではないの?
そう思った貴方、是非この本を読んでみることをおススメします。(実際自分も答えを間違えました)
The Intelligence Trap(インテリジェンス・トラップ) なぜ、賢い人ほど愚かな決断を下すのか (日本経済新聞出版)
本書は書店で一際タイトルに目がつられ、是非読んでみたいなと思って購入した書籍。優秀で高い教育を受けた人ほど、『知性のワナ』に陥りやすいことと、それに陥らないための対策が示されている。
自分の性格や気質を考えてみても、非常に参考になる要素が書かれていたので、とても読んでタメになる良書でした。
一部ではあるが、優秀な人が陥りやすい思考と、それに対する対策を書いていこうと思います。
【知能が高い人々が愚かな行動に走る主な原因】
知能な人が全員、愚かな行動をするわけではないけれども、そのプロセスにおいて陥りやすい思考の弱点を挙げてみる。
(1)人生で起こる問題に対処するのに必要な、創造的知能や実務的知能が欠けている。
これはそういう人もいるというお話。
(2)『合理性障害』があり、偏った直感的判断を下してしまう。
ここでいう合理性とは、以下の定義によるもの。
合理性:与えられたリソースをもとに目的達成に向けて『最適な』判断を下す能力。証拠や論理、健全な推論によって考えをまとめる能力。
一般的に、人々は物事を考える際、主に2つの思考プロセスで処理をする。
『システム1』:直感的かつ自動的な、無意識のバイアスに影響される可能性のある、『早い思考』
『システム2』:より分析的かつ意識的な『遅い思考』
そして、我々の不合理な判断の多くは、『システム1』によるもので、優秀な人々の仲にも、こうした合理的思考が苦手な人が存在する。
(3)『動機づけられた推論』によって、自らの立場と矛盾する証拠を否定するために優れた知能を使ってしまう。
知能の高い人は、たとえ自分が間違っていたとしても、能力が高い故、自己弁護が得意。
そのため、上記にあげた『システム2』を使い、たとえ誤っていても自らの信念を合理化しようとする行為に陥ることがある。
これを『動機づけられた推論』と言う。
また、専門的知識があるという人も、要注意。
自分に知識があると思い込んでいることで、異なる意見を求めたり、耳を傾けたりする姿勢が崩れてしまう傾向があり、筆者はそれを、『獲得されたドグマチズム』と呼んでいる。
専門性があるゆえの、まさに弱点であろう。
【賢いあなたが気を付けるべきこと】
それでは知能の高い人々は、具体的にどういう意識改革が必要なのだろうか。
(1)自らの無知を率直に認める
自らの無知を率直に認めることは、問題を解決する最も簡単な方法だけでなく、情報を入手する最前の方法。
(2)『内省的思考』を磨く
感情は優れた論理的思考の邪魔者ではなく、それに欠かせないもの。意識の表面に浮かび上がらせ、その原因や影響を分析することで、感情は追加的な、場合によっては極めて重要な情報源になりうる。
これを、『内省的思考』と呼ぶ。
日々の中で内省の時間を保つことは、認知的なバイアスを取り除くのに役立つことになる。
―学習者に自らの問題を定義させること、異なる視点から考えさせること、様々な出来事について、実際とは異なる結末を想像させること、主張の誤りを見つけさせることは、より賢明な思考方法の習得につながるだけでなく、学習能力そのものを高めることを示す研究成果が次々と発表されている。(P.345)
巻末に書いてある、筆者の言葉の通りだと思う。
30歳を過ぎ自信過剰になる機会も減ったが、常に謙虚さを保ち、自分も間違った思考に陥りがちと思いながら、仕事やプライベートで大いに参考にしたいと思います。