先日書いたブログで、百人一首が好きと紹介したが、今回はその中でもとりわけ個人的に気に入っている和歌を1つ紹介したいと思います。ちなみに参考文献は、前回にも紹介した
『眠れないほどおもしろい百人一首』
です。
〈第54番〉
忘れじの 行末までは かたければ 今日を限りの 命ともがな
(儀同三司母)
(訳:あなたは私のことを、決して忘れまいとおっしゃるけれども、遠い将来まで言葉通りの愛情が続くかどうか、信じることが難しいので、今日を最後とする命であってほしいと思います。)
作者の儀同三司母は、藤原道隆の妻で、子には一条天皇の皇后となった定子などがいる。夫も子供たちも順調に出世をし、早年には隆盛の波に乗っていたかと思いきや、夫の道隆が43歳で急逝すると、それとともに急速な衰退が始まってしまう。
息子の伊周と隆家はともに藤原道長との権力争いに敗れ左遷、家族は一家離散の失意の中、自身も病に倒れ息を引き取る。
『忘れじの~』の歌は、道隆と若い時代にあった時の初々しい頃の歌だという。
当時は幸せの絶頂にありながら、暗い未来をまるで予期していたかのような、刹那的な感覚。仏教的な無常観を想起させる、何とも深い味わいのする歌だと個人的に思っています。
永遠の愛を信じられない、と言うのは、時代を超えても同じ気持ちなんだろうなあ。