『ヒトラーはいつも、偏見と憎悪とを掻きたて続けることに腐心しておりました。若い人たちにお願いしたい。他の人々に対する敵意や憎悪に駆り立てられることのないようにしていただきたい。』
これは自分の人生の教訓としている、ヴァイツゼッカー元ドイツ連邦共和国大統領の演説の言葉であるが、現代人は常に、歴史に対する学習意識を持ち続けないといけないと感じます。
本日紹介する本は、半藤一利・加藤陽子・保坂正康各氏による編著、
『太平洋戦争への道 1931-1941』
と言う本を読みました。
昭和の日本が犯した大失敗に至る道筋を、6つの転換期から検証し、令和の日本に生きる現代人が学ぶべき教訓を提示しています。
近年、日本の隣国に親しみを感じないという人が、以前に比べてかなり増えているような気がします。
様々な理由はあると思うのですが、アジアとの関係の中で日本の立ち位置が変わってきているということが、先の戦争をどう見るかと言う観点にずいぶん変化を与えているのではないか、編者の一人、加藤氏は述べています。
本書を読むことで、知らなかった史実を改めて学ぶことが出来ました。本当に自分は歴史の知識がなさすぎるなあと痛感。
昭和日本が犯した、致命的な失敗は幾らもあるのですが、その中でも特に印象的だったのは、当時国際協調主義を歩もうとしていた議会制民主主義、政党政治を暴力で否定した、二・二六事件、五・一五事件などのテロリズムに対する、当時の国民の反応でした。
1932年、首相の犬養毅が、青年海軍将校によって殺害される五・一五事件が起こりました。
その裁判の過程で、陸軍の士官候補生や海軍の士官、あるいは農本主義団体の塾生など、事件の血行に関わった者たちに、自分達の主張を思う存分語らせる機会を与えてしまうことが起きました。
その結果、法廷が、『国家改造運動』のプロパガンダの場になり、全国から百万通と言われる、犯人への除名嘆願書が集まったといいます。
日本は、この1932年(昭和8年)を境に、テロリズムの公然たる容認の時期に入ってしまったのでした。
明らかなテロリズムであるのに、こうした暴力に対して国民的な支持が得られてしまったというのは、本当に深刻な出来事だったと思いますし、正直なことを言うと、当時の日本の国民にも、かなりの責任があるのではと感じます。
こうした国民的意識に対しても、現代人はしっかりと厳しい歴史的検証を行うべきだなと感じます。