とりま文系歯科医師が自己投資。

読書好きな開成、一橋大卒文系出身歯科医師のマイペースブログ。読書を中心に学んだ知識をアウトプットすることで、何か社会が少しでも変わればなと思い開設。好きなテーマは小説全般、世界史、経済学、心理学、経済投資など。筋トレも趣味です。

読書感想:『ジーキル博士とハイド氏』

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2020年度1冊目の読了は、スティーブンスン著ジーキル博士とハイド氏』

年譜を見ると1886年の発表なので、おおよそ130年以上前の有名作品ということになる。

著者のスティーブンスンは1850年スコットランドの首都エディンバラ生まれ。大英帝国が『パクス=ブリタニカ』と言われるように積極的に対外進出を図る一方、国内では産業革命の発展の陰で、爆発的な都市の人口増加に伴う労働環境や生活環境の悪化による、社会問題も山積していて、現代の自分にはイメージでしか湧かないが、一般人にとってはかなり劣悪な環境で生活していたのかなと思う。

参考だが、当時ロンドンに留学した夏目漱石が以下のように示している。(1901年1月の日記、参考文献:山川出版社の詳説世界史図録)

「倫敦の街を散歩して試みに痰を吐きて見よ。真黒なる塊の出るに驚くべし。何百万の市民はこのばい煙とこの塵埃を吸収して毎日彼らの肺臓を染めつつあるなり。我ながら鼻をかみ痰をするときは気のひけるほど気味悪きなり。」

 

そうした時代背景も鑑みての小説と考えると、ハイドが誕生するのも想像に難くなく、むしろ現代にも通じている何かがあるのではないかと感じてしまう。

 

二重人格や善悪二面性の代名詞として名高い本作なので、話の内容は特に説明するまでもないのかも知れないが、個人的な読みどころはやはり、後半のジーキル博士の葛藤と苦悩の告白であろう。

 

『一方の顔に善が光り輝いているのなら、他方には悪が、満面にくっきり書かれていた。(中略)ではあっても、その醜悪な偶像を鏡に見出したとき、わたしが感じたのは嫌悪ではなく、むしろひときわ高まる歓迎の気持ちだった。(P.109)』

 

二重人格と言う医学的な視点に関する研究は今でも詳細に行われているだろうけど、ただ、少なくとも純粋な二項対立ではなく、人間の根底に存在する普遍性と言った何かを問いかけている気がする。

だからこそ、今でもミュージカルなどでも愛されている作品なのかな、と思ってしまう。

 

うーん、なかなか上手く表象できているか分からないけど、とりあえず今日はこの辺で。

 

ジーキル博士とハイド氏 (光文社古典新訳文庫)

ジーキル博士とハイド氏 (光文社古典新訳文庫)

 

 

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