一緒に暮らしていた女性二人が自殺を図ったという、何気ない三面記事を、ずっと心の中の『棘』として刺さり続けていた、小説家デビューした主人公。
数十年後、またその記事を目にした主人公は、それをもとに脚本を描こうとする。
筆者の恩田陸氏も作中で書いている通り、この記事は、実際に目にした1994年9月25日の朝日新聞の三面記事として実在しているもの。
フィクションの部分と、ノンフィクションの部分が交互に続き、最終的にそれらが絡み合って一つの作品として構成されている。
―むろん、今現実に起きていることを考えても、本当に「何が起きていたのか」を把握することは不可能である。結果として「起きたこと」や「あったこと」は記録できても、その理由や因果関係までは誰一人として分からない。(P.39)
筆者も小説内でこのように記しているが、第三者として知ることができるのは、客観的な事実でしかない。実際の本当のことはわからない。
同居していた女性が、二人で自殺を図るというのは、おそらく今でもだが、昔なら猶更興味本位でいろいろ検証されたに違いない。
あとがきで恩田氏が、この記事の詳細について書いている。
内容はここではあえては触れませんが、恩田氏は、『モノを書く』ということの不思議さについて言及しています。
―今では、私は二人の名前を知っているし、死に至る背景もほんの少しだけ知っている。
でも、それはわずか数行の事実であるし、本当に本当のところは、結局誰にもわからない。
けれど、図らずも、自分が書いたことが、真実を突いていた部分もある。(P.389)
書店で何気なく手にした小説でしたが、非常に印象に残る作品でした。
