とりま文系歯科医師が自己投資。

読書好きな開成、一橋大卒文系出身歯科医師のマイペースブログ。読書を中心に学んだ知識をアウトプットすることで、何か社会が少しでも変わればなと思い開設。好きなテーマは小説全般、世界史、経済学、心理学、経済投資など。筋トレも趣味です。

読書感想:『灰の劇場』

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

 

 一緒に暮らしていた女性二人が自殺を図ったという、何気ない三面記事を、ずっと心の中の『棘』として刺さり続けていた、小説家デビューした主人公。

 数十年後、またその記事を目にした主人公は、それをもとに脚本を描こうとする。

 

 

 

 

 筆者の恩田陸氏も作中で書いている通り、この記事は、実際に目にした1994年9月25日の朝日新聞の三面記事として実在しているもの。

 

 フィクションの部分と、ノンフィクションの部分が交互に続き、最終的にそれらが絡み合って一つの作品として構成されている。

 

 

―むろん、今現実に起きていることを考えても、本当に「何が起きていたのか」を把握することは不可能である。結果として「起きたこと」や「あったこと」は記録できても、その理由や因果関係までは誰一人として分からない。(P.39)

 

 筆者も小説内でこのように記しているが、第三者として知ることができるのは、客観的な事実でしかない。実際の本当のことはわからない。

 

 同居していた女性が、二人で自殺を図るというのは、おそらく今でもだが、昔なら猶更興味本位でいろいろ検証されたに違いない。

 

 あとがきで恩田氏が、この記事の詳細について書いている。

 内容はここではあえては触れませんが、恩田氏は、『モノを書く』ということの不思議さについて言及しています。

 

―今では、私は二人の名前を知っているし、死に至る背景もほんの少しだけ知っている。

でも、それはわずか数行の事実であるし、本当に本当のところは、結局誰にもわからない。

けれど、図らずも、自分が書いたことが、真実を突いていた部分もある。(P.389)

 

 書店で何気なく手にした小説でしたが、非常に印象に残る作品でした。

Copyright ©とりま文系歯科医師が自己投資。 All rights reserved.

プライバシーポリシー