古典の小説は、定期的に読もうと思っています。
よくお世話になっているのが、光文社古典新訳文庫ですが、今回ご紹介するのは、サン=テグジュペリの著作、
『夜間飛行』
という小説。
本作は、1931年に刊行された、サン=テグジュペリの小説における代表作。
小型飛行機の墜落事故を題材とし、その当時南米と欧州を結んでエアメールを運んでいた夜間郵便にまつわる一夜の状況を描いています。
物語は23章からなっており、テンポよく話が進んでいく。
生死のはざまで、漠然とした不測の脅威が付きまとう夜間空路を滑走する操縦士。
また、どんな小さなミスも決して許さない、非常に冷徹かつ厳格だが、孤独の中で自身を顧み続ける上司。
物語の主人公は、生死をかけて夜間飛行を行う操縦士もそうなのですが、どんなミスも許さず、仕事に徹底的にシビアなスタンスを取り続ける上司も、もう一人の主人公だと思えます。
昨今の感覚からしたら、ここまでシビアな人間は、パワハラ上司、と言われるものなのかもしれません。
ですが、この上司も、上司なりに、自分自身の中で猛烈な孤独感や、プレッシャーに押しつぶされそうになって葛藤している。
その仕事に対するスタンスが、最終的には人間の生き方にも繋がるものがあり、テンポの良い物語ながらも、非常に深いものがあります。
―勝利。敗北。そうした言葉はおよそ意味をなさない。生きることはそうした観念の足元で、すでに新しい観念をかたちづくりつつある。勝ったためにかえって民の力が弱まることもあれば、負けたために民が目覚めることもある。(P.133)
南米大陸の強烈な大自然のコントラストとも相まって、非常に印象的な物語になっています。