本日も、湊かなえ氏の小説をご紹介。
以前から購入してずっと積読だったのですが、やっと読み終えることが出来ました。
物語の舞台は、緑豊かな海辺に面した、人口7千人の鼻崎町と言う町。
過去には一日に一万人が訪れるくらいの商店街も存在していたが、現在は閑散としており、これからどのように町おこしをしていこうか、地元の人も扱いかねている。
商店街の仏具屋の妻である堂場奈々子、都会から移住してきた陶芸家の星川すみれ、男が水産会社に勤める転勤族の妻、相葉光稀。
ばらばらな属性を持った女たちが、祭りで偶然起きた事件をキッカケに、すみれの作る陶器のストラップを使ったボランティア基金を立ち上げる。
するとそのボランティア基金が、ネット上で話題になり、陶芸を通じたボランティア活動は、周囲から注目を浴びるようになる。
しかし、周囲の同情を含んだ称賛は、次第に妬みや嫉妬の声に変化していく。
そして最終的には、本当に社会貢献しているのか、という批判を含んだ強い感情に変わる。
それぞれの思惑の違いや、周囲の嫉妬ややっかみにより、思いがけない出来事を起こすというのが本小説の醍醐味であろう。
作家の原田ひ香氏も巻末の解説で述べているが、湊かなえ氏の作品の特長は、
登場人物たちの強烈な『主観』
が非常に印象深いということだろう。
最近読み、映画化された小説『母性』でもそうだったのですが、複数の『主観』や『自我』が絡み合いながら物語が構築され、進んでいく、いわば
『主観と主観の殴り合い』
というのが実に強烈で、かつ頭に残るのが特色。
登場人物をこのように巧みに演出するのは、正に湊かなえ氏の凄さだと思います。
それでいて、ミステリーとしてもしっかり完結している。
人間の本性を常に生々しく描き出す、湊かなえ氏の作品、また読んでいきたいと思います。
善意は悪意より恐ろしい。