とりま文系歯科医師が自己投資。

読書好きな開成、一橋大卒文系出身歯科医師のマイペースブログ。読書を中心に学んだ知識をアウトプットすることで、何か社会が少しでも変わればなと思い開設。好きなテーマは小説全般、世界史、経済学、心理学、経済投資など。筋トレも趣味です。

読書感想:『琥珀の夢 小説鳥井信治郎(上・下)』

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 お疲れ様です、スナフキンです。

 

 今回も、自分が大好きな作家、伊集院静氏の小説を紹介したいと思います。

 

 伊集院氏の小説は、人間が、他者と生きていく中で何が肝心なのか、人間形成において、何が必要なのかを様々な状況で問いかけるものが多いです。

 

 今回紹介する、

琥珀の夢』

と言う小説も、まさにそうした、人間の生きざまにおいて、学ぶべきことが多い小説と言えるでしょう。

 

 

 

 本作の主人公は、サントリーの創業者となった、鳥井信治郎

 明治時代を生きた鳥井氏の少年時代から始まり、幾多の出会いや別れを通じ、後のサントリーとなる寿屋洋酒店を築き、発展させていくまでの軌跡が描かれています。

 

 特に、印象深かったのは、明治40年、後のサントリーとなる寿屋洋酒店の創業者、鳥井信治郎と、五大自転車店の丁稚・幸吉とのやり取りでした。

 

 当時の自転車は一台100円から120円、現在で換算すると50万円以上もする超高級品でした。

 そんな超高級の自転車を、幸吉が寿屋洋酒店へ届けに行った際、幸吉は美しい光沢を放つ、葡萄酒の瓶を目にします。

『世の中にはいろんなもんがあるんやな。』

 美しい光沢を放つ瓶は、少年の心を駆り立てます。

 

 そこへ寿屋の主人、鳥井信治郎が姿を現す。

『ええもん作るためなら百日、二百日かかってもええんや。ええもんのために人の何十倍も気張らんとあかんのや。そうしてでけた品物には底力があるんや。わかるか、品物も、人も、底力や。

 

『ええ品物を作るために人の何倍も踏ん張ったんや。踏ん張っても、踏ん張っても、まだ足らんと思うて踏ん張るんや。そうしたらあとは、“商いの神さん”があんじょうしてくれはる。そのうち持坊にもわかる時が来る。』

 

 少年は深々と頭を下げて、おおきにありがとうさんだした、と店を出た。

 そして、この少年こそ、後に“経営の神様”と呼ばれるようになった、

松下幸之助

 だったというのです。

 このシーンを読んだ時、非常に鳥肌が立ったのを覚えています(笑)。

 こうして様々なストーリーが繋がっていくのだと。

 

 感動的なストーリーはそれだけでは終わりません。 

 鳥井信治郎と幸吉(松下幸之助)との出逢いから74年後の昭和56年、大阪、築地港のサントリー洋酒プラントの中に、鳥井信治郎銅像が完成します。鳥井信治郎が没して19年後のことでした。

 

 そこに、公の場にほとんど顔を出すことがなくなった、当時87歳の松下幸之助が、久しぶりに姿を見せたました。

 

『今日の銅像の見事な出来栄えと、あの空に“赤玉ポートワイン”を掲げた姿は、私が丁稚の時代に見た信治郎さんそのものです。』

 

 この日の松下幸之助の恩義を忘れぬ出席に、二代目社長、佐治敬三をはじめ、一同が感動したといいます。

 

 経営の神様として、今でも現代人に大きな影響を与える松下幸之助が、“商いの師”として尊敬していた鳥井信治郎は、それほどまで偉大な人物だったのでしょう。

 

 伊集院氏が描きたかった、『類い稀な発想と想像力を持つ一人の商人の生涯』の鳥井信治郎の人生には、学ぶところが非常に多いと思います。

 

 こうした感動を味わえるのが伊集院氏の小説の良さであり、読書の醍醐味なんだなと思いました。

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