『歴史能力検定』が終わりホッと一息した感じの今ですが、10年ぶりに本格的に世界史を勉強し直し、また知識を思い出したいま、今後は歴史関連の著作も色々読んでいこうと思います。
さて、本日ご紹介するのは、西洋文化史家、作家であり、早稲田大学の講師を務める中野京子氏の著作、
『名画の謎 陰謀の歴史篇』
をご紹介したいと思います。
本書は『ギリシア神話篇』、『旧約・新約聖書篇』に続く、『名画の謎』シリーズの第三弾となる作品。
私が読んだ中野氏の初めての作品は、『ヴァレンヌ逃亡』と言う、マリーアントワネットがフランスを亡命しようとした時の緊張の24時間を描いた作品であり、その臨場感あふれ、心震わせる筆致に魅了され、この度他の著作も読んでみたいと思い購入しました。
最後の解説で、作家の宮部みゆき氏も書いていますが、日本人が西洋絵画を鑑賞する時、作品の成立した背景を正しく知り、本物の教養に触れる楽しみを覚えると、今度は自分達の側の鑑賞するまなざしも変わってくるのだと思います。
西洋美術は必ず宗教と結びついているし、欧米人が積み上げてきた歴史観や感性を、文化の違う日本人が理解するためには、ある程度のベースとなる知識が要求されるのだと思います。←これマジ重要。
中野氏の語る通り、
『絵の中で語られている物語を知れば、映画鑑賞は何倍も楽しくなる』
ものだが、逆もまた然り。
つまり、『絵を見れば歴史はもっともっと面白くなる』
ということを中野氏の本では実感できるので、自分自身満足度の高い作品だと思っています。
文系歯科医師として、今まで文系分野の知識を学ぶ機会が無い社会人に対して、少しでも面白く、分かり易く情報を共有できればいいな、と思っているのも、このブログを立ち上げているモチベーションでもありますので、今後も自分も知識を固めながら、色々な情報を書いていきたいと思います。
一つだけ自分が印象的に感じた絵画を紹介します。
ラオコーンは、ミロのヴィーナスやサモトラケのニケと同様、ヘレニズム期の作品として有名なものなのですが、この絵画はそのラオコーンの最期を描いた作品になっています。
ちなみにヘレニズム文化とは表現が難しいのですが、ポリス崩壊後、オリエントへと伝わったギリシア文化がオリエント文化と融合したものといった感じですかね。
また、ラオコーンは、トロイアの神官の人物。
トロイアは、小アジア北西部(現トルコ)に合った古代都市で、ギリシアとの戦いで滅ぼされたと言われています。
話のエピソードはこんな感じです。
-ゼウスの妻ヘラ、戦と学芸のアテナ、美と愛欲のヴィーナスという、いずれも器量自慢の三女神が美貌ナンバーワンを競った。
判定者に選ばれたトロイア王子パリスは、ヴィーナスに賞杯の金のりんごを与え、ヴィーナスからは見返りに、スパルタ王妃ヘレネの愛をもらう。
その結果、ヘレネはパリスとトロイアへ駆け落ちし、駆け落ちに怒りが収まらないギリシア都市国家群はヘレネ奪還で結束。ミケーネ王アガメムノンを大将に、船団でトロイアに攻め込む。
だが戦争は長期化。
ギリシアの知将オデュッセウスが、かの有名な『トロイアの木馬』を発表。巨大な木馬の腹部に兵を隠し、スキを見て奇襲をかけようとした。
その時、絵画の主人公神官のラオコーンが、策謀を疑い、破棄するよう通告。
するとアテナ(りんごをもらえずパリスを憎み、ギリシア側に味方)が放った二匹の大蛇が海から現れ、ラオコーンとその二人の息子に絡みつき、三人が息絶える。
この画はそのシーンを描いたもの。
非常に臨場感あふれる作品だったので、こちらを紹介しました。