非常に読み応えがあり、勉強になった本であった。
今回の読書感想は世界史の偉人に関する新書である。
世界史上には数多くの有名な人物がいるが、その中で個人的にとりわけ凄いな、と感じたのが本書でも取り上げられる、『ビスマルク』である。
ビスマルクの世界史的業績は、受験世界史のレベルでも十分に納得できる。
『ドイツ帝国』という歴史上初のドイツ統一を成し遂げ、周辺諸国を驚かせる国家を建国。脅威に怯える周辺諸国の侵略を阻止すべく、巧みに外交手腕を発揮しドイツの安全保障を確保。一気に強力な国家へのサクセスストーリーを歩みだす。
また内政でも、社会主義者の台頭を阻止するため、社会主義者鎮圧法を制定する一方で、歴史上初の社会保障制度を成立させる。いわゆる『アメとムチ』と呼ばれる政策である。
こうして内外共に強固な地盤を築き上げていったビスマルクの政治手腕に関して、いつか詳しく調べてみたいなと思っていた。
本書は、ワシントンに30年間在住し、国際政治アナリストとして活躍されている伊藤貫氏が書いたものである。
伊藤氏は巻末で、現在の護憲左翼と拝米保守の日本人が、今後も『自主防衛して、自国の運命に対して自分で責任を取る』という当たり前の義務を実行するつもりが無いのなら、日本は米中朝露・四核武装国の熾烈なパワー・ポリティクスの荒波に呑まれて沈没していく、と警鐘を述べている。
本書を読んだ自分自身が、日本のあるべき姿はこうであれ、といった主張を今回ここで端的に述べることはできない。
ただ、少なくとも、現在の国際社会は、『リアリズム外交=バランスオブパワー外交』で成り立っている。リアリズム外交とは以下のようなものである。
【リアリズム外交】
①無政府的で不安定な国際政治状況を少しでも安定させるため、世界諸国はバランスオブパワーの維持に努める必要がある。
②自国の思想的・宗教的・文明的な優越性や普遍性を口実として、他国に内政干渉をしたり、軍事介入すべきではない。リアリズム外交に情緒は不要。自国の主義や主張を、外交政策の判断に持ち込まない。
③国際政治の行動主体は国民国家であり、国際機関や同盟関係ではない。
最も強力な覇権国をカウンター・バランスとして、勢力均衡の状態を作ろうとする、国際政治のこうした外交を学ぶために、本書で述べられる、『ビスマルク、タレ―ラン、ドゴール』といった三賢人の『リアリズム外交』を学ぶことは非常に有益であるのは間違いない。
世界史を学ぶということは、現代社会を学ぶということであることを再認識した一冊であった。
社会人になるとこうした知的好奇心の興奮を忘れてしまいがちであるが、そうした興奮を忘れないようにしたい。